らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【絵画】「雨 蒸気 速度 グレートウェスタン鉄道」ジョセフ・マロード・ターナー

 
 
 
 
ちょっとキザな言い方かもしれませんが、
絵画との出会いは、恋の出会いと似ているところがあります。

それまで眼中に入らなかったものが、ふとした拍子にその魅力に気付いた瞬間、
突然、その全体が視界に入ってきて心を離さなくなる。
その気付いた魅力を隅から隅まで、じつと眺めたくなり、
奥にあるものまで見届けたくなる。

今回は自分がそのような体験をした作品、
ジョセフ・マロード・ターナー
「雨 蒸気 速度 グレートウェスタン鉄道」

それまでは、全体的にぼやっと霞んで、
何が描いてあるんだか、なんだかはっきりしない絵だな、と思っていたこの作品。
しかし、ある時、ふと、この絵を見ると
霞のような雨の中から突き進んでくる一台の機関車。
それはとても力強く、大気を覆う霧雨を突き破って
こちらに迫ってくるような力と勢い、そして疾走感。
そして何よりもまわりを包み込むもやもやとしたものを
突き破ろうとする強い意志のようなもの。

ターナーは、この絵を描く際、
実際にこの機関車に乗り、窓から身を乗り出して、
差し込んでくる光、そして流れてくる風と大気を感じて、インスピレーションを得たとか。
光と大気の画家といわれたターナーの、その真骨頂といえる作品といわれています。


そしてこの作品及びターナーに魅せられた2人の人物がいます。

歌手の山下達郎さんは、この絵をモチーフに「ターナーの汽罐車」という曲を書きました。
それがこちらです。
https://youtu.be/_NgySdwLuXw

彼女の心にぼんやりとした霧雨がかかっていて
その心の全てを見ることができない。
でもそのもやもやとした霧のようなものを突っ切って、
彼女の心の中に進んでいこうとする力強い意志、迷いのない愛情、
このようなものが感じ取れるような気がします。

彼女の席のそばに掛かっているターナーの絵になぞらえて、
彼女を想う彼の心情を描写するって
山下達郎さんらしい、都会的なオシャレで素敵な発想だなと思います。
さすがです。

そしてターナーに魅せられたもう1人は夏目漱石
漱石はロンドン留学中に、ロンドンの美術館にあるターナーの絵をいくつか見て
その作品を非常に気に入ったといわれています。

そして、彼の小説にもターナーの絵が登場する描写があるんです。
ちょっとそのさわりを紹介しましょう。


「あの松を見たまえ、幹が真直で、上が傘のように開いてターナーの画にありそうだね」
と赤シャツが野だ(野だいこ)に云うと、
野だは「全くターナーですね。どうもあの曲り具合ったらありませんね。ターナーそっくりですよ」
と心得顔である。
ターナーとは何の事だか知らないが、聞かないでも困らない事だから黙っていた。
夏目漱石「坊ちゃん」より)

このターナー島、正式には、四十島(しじゅうしま)というそうです。
こちらの島です。