【万葉集2013】5 我が園に梅の花散る
我が園に
梅の花散る
ひさかたの
天より雪の
流れ来るかも
大伴旅人
私の園に
梅の花が散る
天から雪が
流れて来るのだろうか
首都圏では、三寒四温どころか、もう、ずっと暖かい日が続いていて、
たまに寒い日があるというような季節柄になってきました。
春の花々も、それぞれに咲きほころびようとする今日この頃ですが、
春を代表する花として、ぱっと浮かぶのは、
やはり桃、梅、桜というところでしょうか。
その中で自分が一番好きなのは、梅なんです。それも白梅。
梅の花散る
ひさかたの
天より雪の
流れ来るかも
大伴旅人
私の園に
梅の花が散る
天から雪が
流れて来るのだろうか
首都圏では、三寒四温どころか、もう、ずっと暖かい日が続いていて、
たまに寒い日があるというような季節柄になってきました。
春の花々も、それぞれに咲きほころびようとする今日この頃ですが、
春を代表する花として、ぱっと浮かぶのは、
やはり桃、梅、桜というところでしょうか。
その中で自分が一番好きなのは、梅なんです。それも白梅。
つつましやかで、可愛らしくて、品がよく、それでいて華がある。
派手さはありませんが、ずっと見ていても飽きない花です。
そして、白梅が一番美しいと感じる時はいつか。
それは、ひとつには、花が散る時だと感じます。
この歌はその情景を見事に、美しく捉えたもので、
万葉集の中でも最も好きな歌のひとつです。
あれは、今から十年くらい前の春のことだったと思います。
自宅から駅までの道すがらに、
ちょっとした梅園があったのですが、
すでに花は盛りを過ぎ、大方は散りつつありました。
梅の花の散り方というのは、楚々としており、
はらりはらりと、後ろ髪引かれる感じではなく、
ちらちらと、
最後の小さなきらめきを放ちながら散ってゆくものです。
ちょうどその日は、春の戻り寒の薄ら寒い日で、空もどんよりと曇っており、
三月も末だというのに、
いつしか、ちらちらと小雪が舞い始めました。
すると天から舞ってきた小雪と風に舞って散りゆく白梅の花びらが、
お互いに重なり、混じり合い、
一見、それが雪なのか花びらなのか見分けがつかないような風となりました。
それは本当に美しい白の世界でした。
空から白梅の花びらが舞ってきたようにも見え、
梅の木から雪が散っていっていくようにも見え、
白梅の花びらと小雪の舞い方というのは、ちょっと似ているんです。
ちらちらと小さく輝きながら地に下りてゆき、
地に下りると静かに透明になってゆく。
天から舞う小雪も同じです。
この歌をみると、その時の情景が、今も鮮やかに脳裏に蘇ってきます。
同じ梅でも紅梅ではそうはいかないのです。
花の色が艶やかな分、散り逝った姿はどうしても汚れを帯びてしまう。
千年前の万葉人たちも同じような思いで、
散り逝く白梅の花を眺めていたかと思うと、
なんだか彼らとの不思議なつながりのようなものを感じます。