らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【演劇】ミュージカル「キャッツ」観覧記 前編


自分はミュージカルが結構好きで、
ミュージカルの舞台や映画など機会があれば、ちょくちょく見ることがあります。

特に好きなミュージカルは、
「ウエストサイドストーリー」「コーラスライン」「サウンドオブミュージック」といったところです。
お気に入りのものは、何度も繰り返して、見てしまう。
そんな魅力がミュージカルにはあります。

ところで、オペラとミュージカルは、どう違うんだと言われることがあります。
これについては、どうも明確な基準はないようです。
自分的には歌、ダンスという要素のうち、
歌に力点があるのがオペラで、ダンスに力点があるのがミュージカルかな、
というイメージです。

そのミュージカルのお気に入りの中のひとつが、
今回記事で紹介する「キャッツ」です。
 



人間に飼い慣らされる事を拒み、
野良ネコとして強く生きようとする
猫の個性あふれる面々の姿を描いたミュージカルで、

簡単にあらすじを紹介しますと、
ある夜、都会の片隅のごみ置き場に何匹もの猫が集まってきます。
その夜は、年に一度、長老猫によって、
猫の最高の天国に行ける「ジェリクル・キャット」を選ぶ大舞踏会の日。
それぞれの猫が、日々どのように感じ、どう生きてきたのか、
それぞれ個性あふれる表現で披露していく…

というものです。

自分が「キャッツ」を初めて見たのは劇団四季による名古屋公演でのことでした。
1990年前後のことだったと記憶しています。
映画や観劇が好きな母に連れられてのことでしたが、
この時、劇団四季の舞台も初見でした。


この時の舞台は非常に素晴らしいもので、
日本にも、こんなにレベルの高い、
ミュージカルを演じることのできる人達がいるのかと大変感動しました。

それぞれの個性ある猫が丁寧に演じ分けられ、
1つの劇としてもチームワーク良くきちんとまとまっており、
過不足ない、「キャッツ」の魅力が十分に伝わるものであったと思います。

「キャッツ」の素晴らしさを一番最初に教えてくれたのは、
劇団四季の、この名古屋公演だったなと思います。


それから数年後、ニューヨークのブロードウェイで本場の「キャッツ」を見ました。
先の名古屋公演で、ストーリーは知っていましたので、
全てが英語のセリフでも、大まかな話の流れは理解できました。

夜の帳(とばり)が降りるように劇場内が静かに暗くなると、
しばらくしてオープニングの音楽が鳴り響き、
猫達が舞台に集まってきました。

劇が進むにつれ、自分はその舞台に圧倒され、
まばたきする間も惜しいと思うほど、
都会の片隅のゴミ置き場に集う
猫達の歌やダンスに見入ってしまっていました。

ブロードウェイの猫達から放たれる、
それぞれの個性のきらめきが本当に素晴らしかったのです。

次々と繰り出される様々な猫達の魅力ある個性に、
研ぎ澄まされたダンスに歌、
そして猫達が全力で生き抜いている突き抜け感といいますか、
そのようなものが、ステージの空間を絶えず波動のように伝わって、
自分の心に打ちつけ、わしづかみにし、
そのままステージまで一気に引き寄せて持っていかれてしまう…
というのは決して大げさな表現ではありません。

会場の空気を完全に包み込んで、
劇場全体に素晴らしい猫達の夜の宴の世界を造り上げていたと思います。

劇団四季の名古屋公演と比べると、
その時に感じた素晴らしいチームワーク…というよりは、
それぞれの個性と個性のぶつかり合いが、
素晴らしい感動を生み出しているという感じでした。

ほんの僅かの間だけ舞台の脇で為される
タップダンスひとつ、ダンスのステップひとつ取ってもみても、
思わず見入ってしまって目が釘付けになってしまう。
そんな力が舞台全体に満ち溢れていました。

それは、劇団四季の場合は、劇団として、ひとつの劇を作り上げるのに対し、
ブロードウェイの場合は、期間限定のプロジェクトとして、
ダンサーが単独でオーディションを受け、大勢の競争者の中から役を掴み、
舞台で演じるということとの違いによるものなのかもしれません。

先ほど、「キャッツ」の紹介で、
人間に飼い慣らされる事を拒み、
野良ネコとして強く生きようとする
猫の個性あふれる面々の姿を描いたミュージカル
と言いましたが、

それはある意味、自分の身ひとつ及び自分の身につけたものだけを頼りに、
ブロードウェイの晴れの舞台に立とうとする、
ダンサー達の姿そのもののようにも感じました。

このミュージカル、最後に年老いた娼婦猫が歌う
名曲「メモリー」でクライマックスに上りつめるのですが、
そのクライマックスに至るまでぐいぐい引っ張られ、
舞台で踊る猫達と一緒に気持ちの高揚に上り詰めることができました。


この、自分が非常に感銘を受けたブロードウェイの猫達。
ニューヨークまで見に行ってください、
とまではなかなか言えませんが、
代わりにこちらの映像を。
ライブと映像では、やはり臨場感やらいろいろ違いますが、
しかし、それでも、その一端を感じることができるものです。
ぜひご覧になっていただければと思います。


オープニングの最初のシーン
http://www.youtube.com/watch?v=ltbGKqLLbhE
クライマックスの「メモリー」のシーン
年老いた娼婦猫と崩れそうになる彼女を支える若い女猫の二重唱が素晴らしいです。
http://www.youtube.com/watch?v=FWNWt3kiTWc


後編へ続く