らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【人物列伝】18 八木登美子「もうひとつのひとすじの桜 ある詩人の妻の物 語」最後に…



最後に蛇足ですが、
このブログを開設して2ヵ月くらい経った頃、
まだブログを始めたばかりで1日の訪問者も2、3人ほどだったでしょうか、
自分は、はじめて八木重吉の記事を書きました。


その時、記事を読んだという方から1通のお便りを頂きました。

なんと、その方は八木重吉の詩に感銘を受け、
自ら登美子さんのもとを訪れ、交流していたという方でした。

そうなんですよね。
登美子さんの著書「琴はしずかに 八木重吉の妻として」の背表紙には住所が記されていて、
訪ねて行くことができたんです。
住所を見ると鎌倉の小町という鶴岡八幡宮にほど近いところに住んでいたことがわかります。

その方は、何度か彼女のもとを訪れたそうで、
その度に重吉の詩について話をしたといいます。
少女のような、はにかみをもった、そして、とても穏やかな女性であったそうです。
登美子さんは、その人の求めに応じ「素朴な琴」の詩を色紙に書いてくださり、
それは自分の宝物になっているとのことでした。

その方の希望により頂いたコメントは削除になっており、
ホームページも閉じていらっしゃるので、残念ながら現在連絡を取ることはできません。

しかしこの体験は、人とのつながりの素晴らしさを感じさせ、
ひいては八木重吉との直のつながりを感じ、
一生懸命自分の思いを綴った記事を書いて、
これからもブログを続けてゆこうと思った出来事でした。

その出来事からおよそ1年経ち、
今回いくつかの記事を書かせていただき、
曲がりなにも自分の思いを伝えることができたことを、非常に嬉しく思います。




重吉は美しい種をこの世に生み出した
けれどもそれを実らせる前に
この世を去ってしまった

遺された妻が
その種を一生かけて守り抜いて育てそして実らせた

自分のすべてを犠牲にして…という人もいるが
彼女は与えられた自分自身の人生を
ひたむきにひとすじに生き抜いたのだ
桜が静かに、そして美しく咲き尽くすように…

崩れかけた断崖のように誰もが忌み嫌うところでも
嘆くことなく逃げることなく
しっかりと根をはって
彼女自身の見事な花を咲かせたのだ

重吉が生み出し
自分が実らせた美しい種が
黄金色の稲穂のようになり
風に心地よさげになびいているのを見届けて
彼女は静かにこの世を去った

彼女が守り抜いて実らせてくれたものを
自分も口にして
そう感じる