【けっさんさん1月課題分】小説「狼の少年の物語」秋
秋が訪れた。
実りの秋。
森の動物たちは来るべき冬に備え、エサを求めて野外にくり出す。
それはまた絶好の狩り場ともなった。
老狼は少年に言った。
「狩りのやり方もいよいよ最後の仕上げだ。
今度から1人で追いかけて、1人で獲物を捕らえるんだ。
それを覚えれば、たとえコンビで待ち伏せたところと違う方向に獲物が逃げても、
実りの秋。
森の動物たちは来るべき冬に備え、エサを求めて野外にくり出す。
それはまた絶好の狩り場ともなった。
老狼は少年に言った。
「狩りのやり方もいよいよ最後の仕上げだ。
今度から1人で追いかけて、1人で獲物を捕らえるんだ。
それを覚えれば、たとえコンビで待ち伏せたところと違う方向に獲物が逃げても、
計画を変更して仕留めることができるし、一人だけでも狩りができる。
ちょっと難しいぞ。」
確かに獲物を追跡して、かつ仕留めることは非常にタイミングが難しく、骨が折れた。
少年は毎日毎日朝から晩まで夢中で獲物を追いかけ続けた。
そして少しずつではあるが、コツをつかみ始めた。
やがて初めて全て一人で獲物を仕留めた時、少年はいままでにない高揚感を感じた。
何か世界がぱあっと広がったような感じがした。
「やった!」
「うむ、思ったより早くできたな、もたん。でかした。」
少年は喜々として言った。
「さあ、もた爺、半分に分けて早く食べよう。
今日は初めて一人で仕留めたお祝いだ。」
しかし老狼はそれには応じず、しばらく黙っていた。
そしておもむろに言った。
「もたん、それはお前が狩りで仕留めた獲物だ。
まずお前が腹一杯食え。
余ったら残りをわしが食べる。」
少年は驚いて老狼の顔を見た。
「えっ!?…いつも獲物は半分にしてきたじゃないか。
なんで今日に限って、そんな…」
「それはな、昔から受け継がれてきた狼の掟なんだよ。」
「そんな…掟なんて、どうだっていいじゃないか。
僕も半分ずつでいいと思っているんだし…」
老狼は少年の言葉を途中でさえぎるように、そして諭すように続けた。
「もたん、狼の掟っていうのはな、誰かが気まぐれで作ったもんじゃないだ。
狼がずっと生き抜いてゆくため代々受け継がれてきた智恵なんだよ。
目先の情にまどわされちゃいけない。
しっかり食って、しっかり狩りで獲物を仕留める。
それが、将来お前が群れを率いた時に、
なによりも一番やらなきゃいけない事なんだ。
お前の父親が割り込みを許さなかったのもそういうことさ。
狩りの厳しさを知った今のお前ならわかるだろ?
群れのみんなの命を守るためなんだ。
掟をしっかり守った者は生き残り、ないがしろにした者は、体力が足りず、
ちょっと難しいぞ。」
確かに獲物を追跡して、かつ仕留めることは非常にタイミングが難しく、骨が折れた。
少年は毎日毎日朝から晩まで夢中で獲物を追いかけ続けた。
そして少しずつではあるが、コツをつかみ始めた。
やがて初めて全て一人で獲物を仕留めた時、少年はいままでにない高揚感を感じた。
何か世界がぱあっと広がったような感じがした。
「やった!」
「うむ、思ったより早くできたな、もたん。でかした。」
少年は喜々として言った。
「さあ、もた爺、半分に分けて早く食べよう。
今日は初めて一人で仕留めたお祝いだ。」
しかし老狼はそれには応じず、しばらく黙っていた。
そしておもむろに言った。
「もたん、それはお前が狩りで仕留めた獲物だ。
まずお前が腹一杯食え。
余ったら残りをわしが食べる。」
少年は驚いて老狼の顔を見た。
「えっ!?…いつも獲物は半分にしてきたじゃないか。
なんで今日に限って、そんな…」
「それはな、昔から受け継がれてきた狼の掟なんだよ。」
「そんな…掟なんて、どうだっていいじゃないか。
僕も半分ずつでいいと思っているんだし…」
老狼は少年の言葉を途中でさえぎるように、そして諭すように続けた。
「もたん、狼の掟っていうのはな、誰かが気まぐれで作ったもんじゃないだ。
狼がずっと生き抜いてゆくため代々受け継がれてきた智恵なんだよ。
目先の情にまどわされちゃいけない。
しっかり食って、しっかり狩りで獲物を仕留める。
それが、将来お前が群れを率いた時に、
なによりも一番やらなきゃいけない事なんだ。
お前の父親が割り込みを許さなかったのもそういうことさ。
狩りの厳しさを知った今のお前ならわかるだろ?
群れのみんなの命を守るためなんだ。
掟をしっかり守った者は生き残り、ないがしろにした者は、体力が足りず、
結局獲物が取れず、群れごと飢えて死んでいったのさ。
わかったか?
わかったなら早く食え。」
少年は老狼の言うことに従う他はなかった。
初めて自分が狩りで仕留めた獲物は、なにか切ないような、しょっぱいような味がした。
それからというもの、少年は少々寡黙になった。
そして黙々と獲物を追いかける毎日が続いた。
めきめきと少年は狩りの腕を上げていった。
老狼もまた、黙って、少年の狩りの様子をじっと見ていた。
太陽の柔らかな光を浴びて森の木々も金色や紅に輝いた、秋も真っ盛りのことだった。
続く
わかったか?
わかったなら早く食え。」
少年は老狼の言うことに従う他はなかった。
初めて自分が狩りで仕留めた獲物は、なにか切ないような、しょっぱいような味がした。
それからというもの、少年は少々寡黙になった。
そして黙々と獲物を追いかける毎日が続いた。
めきめきと少年は狩りの腕を上げていった。
老狼もまた、黙って、少年の狩りの様子をじっと見ていた。
太陽の柔らかな光を浴びて森の木々も金色や紅に輝いた、秋も真っ盛りのことだった。
続く