らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【映画】八つ墓村

 
 
1977年松竹
横溝正史原作
野村芳太郎監督
萩原健一(寺田辰弥)渥美清金田一耕助小川真由美(森美也子)
山崎努 (要蔵・久弥・庄左衛門(三役))夏八木勲(尼子義孝)

小学生の夏休みにテレビで放送されていたのを見てからずっとトラウマになった映画。
自分的には今まで見た中で3本の指に入る「ホラー映画」。


戦国時代、毛利との戦に破れた尼子義孝が7人の家来を連れて、
美作(今の岡山県北部)の山深い村に落ち延びてくる。
最初のうちは村人とうまくやっていたのだが、
やがて、毛利方の詮議が村まで迫り莫大な恩賞に目の眩んだ村人は落ち武者殺しを決行。
だまし討ちされた義孝は死の間際に呪いの言葉をのこす。
 
「この村の者を末代まで祟ってくれる」

その後村では奇妙な出来事が相次ぎ、祟りを恐れた村人たちは
野晒しになっていた武者達の遺体を手厚く葬るとともに村の鎮守とした。
そしていつの頃からか村は八つ墓村と呼ばれるようになった。
 
それから数百年の時が流れ、
昭和23年落武者殺害の首謀者多治見家を中心に、
数百年前の再来と思えるような殺人事件が次々と起きていく…

というプロローグなのですが、冒頭からおどろおどろしく人が死ぬわ死ぬわ。
多治見家の遺産相続人辰弥を迎えに来た老人がいきなり泡を吹いて死に、
辰弥の兄久弥も薬を飲んだ直後血を吐いて悶死、
その葬式の通夜で酒を飲んだ通夜客が泡を吹いていきなり頓死。

どうしてこんなことが…と思った矢先、怪しげな老婆が「祟りじゃあ~!!」の絶叫。
「祟り」という言葉を一気に世の人に知らしめた台詞。
当時あったらその年の流行語大賞間違いなしでしょう(^_^;)

その老婆のみならず不気味なキャラが次から次へと。
多治見家の双子の老婆小竹と小梅。
子供の頃この双子の老婆が怖くて怖くて。
 

 

その呪縛は名古屋が生んだスーパーアイドル金さん銀さんが登場するまで続きました。
極めつけは多治見家の先代要蔵の村人32人殺しの回想シーン。
白塗りの顔に頭に懐中電灯をつけ、日本刀と猟銃をそれぞれ両手に持って
次から次へと村人を残虐に殺めていく。
満開の桜が風で夜空に散っていく背景をバックに、
無表情でこちらに走ってくる要蔵は子供にはショックが大きすぎました。
 
 

 
 

しばらくの間、部屋のカーテンを開けたら、要蔵が窓の向こうにいるんじゃないかという恐怖に
夜のトイレも我慢するほど。
 



結局この話、多治見家の遠縁の森美也子が八つ墓村伝説を利用した
遺産相続目当ての連続殺人というオチなんですが、
萩原健一さん演じる辰弥が、鍾乳洞で小川真由美さん演じる森美也子が犯人だとわかると、
みるみるうちに小川真由美さんの顔が口の裂けた悪鬼のように変わっていくんです。
美也子の唸りのような泣き声のような声が、鍾乳洞に反響しながら辰弥を追いかけ、
これはこれでまた怖いんですが、
大人になって見ると、冷や汗を垂らしながら小川真由美さんから必死の形相で逃げる萩原健一さんは
違う意味でちょっと怖いものがあります(笑)

主人公がこのように大ピンチなのに、渥美清さん演じる金田一耕助
「この事件はねえ、とても奥が深いんだよお」と寅さん口調で村人に事件の解説をしていて、
全く助けに行こうとしません。

結局辰弥は鍾乳洞の落盤でかろうじて美也子から逃れることができるのですが、
それがもとで多治見家本家は火事で焼け落ち灰燼に帰します。
焼け落ちる屋敷の中で、ひたすらお経を唱えながら火だるまになって死んでいく双子の老婆。

村が見渡せる丘の上からは、数百年前多治見家の祖先にだまし討ちされた尼子の亡霊達が、
会心の笑みを浮かべて、それを見守っています。
この時の夏八木勲さん演じる尼子義孝の表情が、怨みが強すぎて
本当に祟り神になっちゃったんじゃないかというような超怪演なんです。
その表情からは成仏とかそういうものは感じません。
自ら怨みの炎の中で火だるまになりながら、なお怨み続ける人間の業のようなものを感じます。
最後に流れる芥川龍之介の子息比呂志氏による八つ墓村のテーマ曲も印象的です。

この映画、人を惨たらしく殺めるシーンばかりが強調されますが、
怨みをつきつめた人間の行く末といいますか、
怨念を抱き続けることの虚しさみたいなものもちゃんと描いております。


夏のような暑さが戻った三連休にぞぞぞとしたい方はぜひご覧ください。
山崎努さんと夏八木勲さんの演技本当にヤバいです。
ついでに小川真由美さんも相当ヤバいです(^_^;)