らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【人物列伝】15 廉頗(れんぱ)

 
廉頗(れんぱ)は今から二千数百年前の中国戦国時代で活躍した武将です。
若い頃から戦場をかけめぐり武功を立て勇気のあることでその名が鳴り響いていました。
現役として戦場で活躍することおよそ50年。

今回自分が廉頗を特に取り上げたのは、生涯現役を志向し、
年老いても全く体力気力が衰えなかったことにあります。
生涯現役を理想とする自分の目標というか憧れの存在です。

勇将というと専ら攻めが得意というイメージですが、廉頗は攻守とも超一流でした。
秦(当時の秦王は始皇帝の曾祖父)と対峙した際、守りが非常に固いため秦は攻めあぐね、
戦場にて廉頗を打ち破ることはできませんでした。
後日談として後に秦の謀略により廉頗は司令官を交代させられ、
新しく着任した司令官は戦場にて秦に大敗。
ほとんどの兵士を失いました(長平の戦い)。

廉頗はエピソードからみてもカラッとした性格のようです。
同じ国に藺相如(りんしょうじょ)という史記にも列伝が残るような傑物がおりましたが、
廉頗は戦場にも出ないで自分より高い地位になった藺相如の悪口を公然と言っておりました。
現場の人にはありがちなことではありますね(^_^;)
一方藺相如は沈黙を守って廉頗の罵倒を甘受していましたが、
それが敵国に不和を露呈しないようにという藺相如の深謀遠慮と知るや、
廉頗は肌脱ぎの姿で藺相如を訪ねます。
そして自分の性根の卑しさを恥じ、いばらの鞭で気の済むまでぶってくれと、
自ら罰を申し出たのでした。
それに対し藺相如は将軍あっての我が国だからと不問に付し、
それ以来2人は固い親交を結んだのでした(刎頸の交わり)。

偉い人はなかなか自分の非を認めませんから。
たとえ自分からこぶしを振り上げた場合だとしても。
当時人前で肌脱ぎになるのは罪人くらいですから、
廉頗は自分の体裁を繕い体面を気にするような人ではなかったんでしょうね。
こういう性格なら部下にも信望があったことでしょう。

しかし時は流れ、藺相如は病で亡くなり廉頗は他国へ亡命することになります。
この辺りは人の組合せの妙というか、藺相如あっての廉頗だったのでしょうか。
人は時としてその組合せにより、力を発揮できたりできなかったりすることがあります。

しかし秦の度重なる侵攻に悩まされ、廉頗が現役として通用するか国から使者が来ました。
その使者の前での現役のアピールがユニークなんです。

そのまま紹介しますと
「廉頗は使者の前で米一斗肉十斤を一度の食事でたいらげ、
鎧を着けて馬に乗り、まだ役に立つさまをみせた」

食欲が旺盛なことで現役をアピールするって面白いですね。
でも体力気力が充実してないと大食いはできませんから。
この時廉頗おそらく70歳前後。
それにしても米一斗は十升ですから絶対無理として、話10分の1でも一升飯です。
肉は当時の度量衡が明確ではありませんが、肉十斤なら2~5キロの間というところ。
今でいうと焼肉定食大盛10人前一気に平らげたというところでしょうか。

その直後重い鎧をつけ俊敏に馬に乗ったというんですから、
十分現役で通用する体力気力を持ち合わせていたということでしょう。
しかし現役復帰の話は立ち消えになり、
死ぬ直前まで現役復帰を願いながら亡命先で亡くなります。

この時自分が思ったのはこんな人でも、
人間って寿命が来ると死んじゃうんだなという一抹の寂しさ。

しかし人間いろいろな人生があり太く短くの美学も悪くないですが、
自分は廉頗のように体力気力に満ちた太く長くの人生にやっぱり憧れますね。