らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「神曲 地獄編」2 ダンテ


さて第一圏を通過すると地獄の裁判官ミノスがまちかまえていて1人ずつ裁きを受ける。
日本でいう閻魔大王にあたる。

ミノスは人の形をしながら獣の尻尾を持っており(画像参照)、亡者をその尻尾で打つと尻尾が体に巻きつき、たくさん巻かれた者ほど罪が重く、地獄の深い層に落とされるという裁きの方法を採っている。

閻魔大王が笏を持って中国の道服を着用し、鏡に生前に犯した罪が映し出されるのを見て裁く方法の方が、より客観的で公正な権威ある裁判という気がしないでもない笑。

ダンテ「神曲」ではミノスのような半獣半人のようなキャラがはるかに人間の能力を超える存在として、地獄でそれぞれ任務を司っている。

ミノスの裁きを通過すると第二圏に至る。
ここは愛欲者の地獄。即ち肉欲に溺れた者が永劫に荒れ狂う暴風に吹き流される。
ここにいる歴史上の人物としてカルタゴの女王ディドやトロイ戦争の原因になったエレーナやクレオパトラが挙げられている。
クレオパトラは今でこそ政治家としての側面を論じられつつあるが、当時はカエサルアントニウスと時の権力者の庇護を求めたことが、当時は情欲で権力者を操り自己の保身を図ったと評価されていたのだろうと思う。

次の第三圏に落ちた亡者は3つの頭を持つ地獄の怪獣ケルベロスの爪に引き裂かれ、巨大な牙で噛み砕かれ、食われた体は泥のような糞として排出され、そこから再生し、またケルベロスに食いちぎられるという永遠の苦しみを受ける。

個人的にはこの地獄に落ちたくない(^_^;)ちょっとキツすぎます。

どんな罪を犯した人々が落ちる地獄だと思われるだろうか。

答えは大食の罪を犯した者(貪食者)が落ちる地獄。
え~、そんなことでこんな苦しい地獄に落ちるの?と思われる方もいるかもしれない。

ダンテが生きた中世欧州は当時小氷河期といってもよい時期で土地も非常に痩せていた。麦一粒植えて収穫は数粒に過ぎなかったと言われる。
ダンテが活動したフィレンツェは当時欧州でも豊かな都市で過分な飽食が行われていたが、一歩地方に出ると飢餓が蔓延していたと思われる。
ダンテはそれを見てわざわざ貪食者の地獄を創出したのかもしれない。

思うにケルベロスの3つの頭は、1つの口では飽きたらず食いまくる亡者の生きていた時の姿そのものを象徴しているのかもしれない。
食べては排出しを繰り返し、それにのみ執着してきた人生。
自己が食べ物を食い散らかしてきたように、ケルベロスに食い散らかされる。因果応報の姿なのか。


そして第四圏の入口辺りに冥府の神プルートが踏ん張っている。
プルートの咆哮「パペ・サタン、パペ・サタン、アレッペ!」
意味は不明。一説によると十字架にかけられたイエスが絶命の間際「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」(わが神、わが神、なぜお見捨てになるのですか)と叫んだことにちなんだ言葉と言われる。
このプルート。ギリシア神話ではハーデースという名前で登場する。
どちらの名前でも最近の漫画に結構登場している人気者の冥界の神。

原子力発電で問題となっているプルトニウムも直接的ではないが、元々の語源はこのプルートに由来すると言われる。


まだまだ地獄の三丁目を過ぎたばかりですが、長くなりましたので第四圏からはまた次回に。