らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【万葉集2011】10 天地の別れし時ゆ





 
今週自分が感じ入った歌は富士山を讃える決定版のような長歌


天地(あまつち)の
別れし時ゆ
神さびて
高く貴き
駿河なる
富士の高嶺を
天(あま)の原
ふりさけ見れば
渡る日の
影も隠らひ
照る月の
光も見えず
白雲も
い行きはばかり
時じけそ
雪は降りける
語り継ぎ
言い継ぎ行かむ
富士の高嶺は



山部赤人



天と地が別れたときから
神々しくて高くて貴い
駿河の国にある富士の高嶺を
天空に振り仰いでみると
空を渡る太陽の姿も隠れ
照る月の光も見えない
白雲も進みかね
時となくいつも雪は降り積もっている
語り伝え言い継いでゆこう
この富士の高嶺は



選者は「千の風になって」の作詞作曲家の新井満さんです。

選者は、歌の冒頭の「天地(あまつち)の」が、
宇宙が誕生したときからすでに富士山は駿河国にそびえ立っていたとする
大きな構えの作品にしていると言います。
確かに富士山って高さだけなら3776mで、
世界にそれより高い山はいくらでもあるのに特別な印象があります。
三角形の美しい造形と独立峰であることが、
孤高な神々しさをかもし出しているのでしょうか。

ちなみに快晴だと横浜から富士山はよく見えます。
富士山がよく見える丘の上は、天気がよければよく選択する朝の散策ルートのひとつです(画像参照)。
名古屋に住んでいた時は、富士山は見えませんでした。
ですから首都圏に住むようになって毎日富士山を見ることができて、ちょっと感動でした。

名古屋から見える印象的な山といえば、伊吹山と御嶽(おんたけ)山ですかね。
自分は名古屋市内でも北部の方だったのですが、
冬は伊吹おろしと言って、
福井県敦賀あたりから伊吹山を経由して愛知岐阜の濃尾平野に吹き降りる北風がすごいんですよ。
自転車を漕いで風上に進めないくらい(^_^;)
御嶽山は漢字の「山」の形をした三千m級のどっしりした感じの山でしたね。
行者信仰の山でもありますので、富士山とはまた違った独特の神々しさが漂う山でした。

日本は山国ですから、どこかしら山は必ず見えるので、
その土地の印象的な山はそれぞれあるでしょう。
石川啄木も故郷の山の歌をたくさん詠んでいるのはご存知の通りです。

ふるさとの
山に向かひて
言ふことなし
ふるさとの山は
ありがたきかな


自分にとって「ふるさとの山」は首都圏に住んでいるときは伊吹山御嶽山
日本を離れて外国に住んでいるときは(外国に住んだことありませんけど)富士山なのかもしれません。