「蜘蛛の糸」もたんもぞ編
ある日の早朝の事でございます。
もたんもぞという男が朝の散策をしようと
もたんもぞという男が朝の散策をしようと
自宅マンションの廊下を独りでぶらぶら歩いておりました。
すると廊下にコガネムシが一匹、
現世であるならばコガネムシの名前にちなんで玄関に金塊を置いていってくれてもよいのだぞ。
と飛んでいったコガネムシに大きく手を振って見送りました。
すると何を思ったのでございましょう。
飛んでいったコガネムシが大きく右旋回して、こちらに戻ってきたのでございます。
そしてもたんもぞの足元に降り立つや、
すると何を思ったのでございましょう。
飛んでいったコガネムシが大きく右旋回して、こちらに戻ってきたのでございます。
そしてもたんもぞの足元に降り立つや、
みずからひっくり返って、先と同じようにじたばた蠢(うごめ)き始めたのでございます。
もたんもぞはこの一部始終をじっと見ていましたが、
もたんもぞはこの一部始終をじっと見ていましたが、
コガネムシが再びひっくり返って蠢(うごめ)き始めたのを見て、
悲しそうな顔をしながらまたぶらぶら歩き始めました。
梅雨の湿った空気が緑の濃い匂いと混ざり合い、絶間なくあたりへ溢れて居ります。
もう横浜も日の出に近くなったのでございましょう。
おしまい
梅雨の湿った空気が緑の濃い匂いと混ざり合い、絶間なくあたりへ溢れて居ります。
もう横浜も日の出に近くなったのでございましょう。
おしまい