らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「よだかの星」 宮沢賢治

よだかという鳥をご存知でしょうか。

「よだかは、実にみにくい鳥です。
顔は、ところどころ、味噌をつけたようにまだらで、くちばしは、ひらたくて、耳までさけています。
足は、まるでよぼよぼで、一間とも歩けません。」

よだかは容姿が醜いということだけで森の鳥達から嫌われ陰口を叩かれ、
また鷹からは名前が似ているということだけで改名を強要されます。

しかしよだかは心優しい。
誰も恨むことなく誰も非難することもありません。

それどころか自分が生き続けることで誰かに迷惑をかけていないか気にかけ、
弟のカワセミにどうしても必要なとき以外は、不必要に魚を取ったりしないように戒めてお別れをします。

よだかは自分の巣の中をきちんとかたづけ、きれいにからだ中のはねや毛をそろえて、
住んでいた森を静かに去っていきます。

最後の望みをかけて太陽や夜空に輝く星々のそばに置いてくれるように頼みますが、
無視されたりむげに断られたりで相手にされません。

よだかは絶望して力なく地に落ちていきますが、地に落ちる寸前空に舞い上がり
最後の命を燃やして高く高く叫び、どこまでもどこまでもまっすぐに空へのぼって行きます。

よだかはやがて力尽き意識が次第に遠のいていきますが、
最後に自分の体が燐(りん)の火のような青い美しい光になって静かに燃えているのを見ます。



思うに。
よだかを容姿ゆえに嫌い陰口を言った森の鳥達や、改名を強要した鷹はなんとなく生き、なんとなく死んで
生を終え、最後はおそらく土塊(つちくれ)に戻っただけでありましょう。

しかし誰も恨むことなく誰も非難することなく、たえず他人を気にかけ、
最後の最後まで自分の命すべてを燃やし尽くした、
よだかはいつまでもいつまでも夜空に燃え続ける美しい星になりました。

もし永遠の命というものが存在するならば、そういう者だけが持ち得るものなのではないかと思っています。


よだかの星」は宮沢賢治の作品の中でも最もせつなく美しい話のひとつです。
記事に目を通して興味をもたれた方はぜひ読んでいただければと思います。