らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【人物列伝】2  寺田寅彦

現代物理学(量子物理学)が可能にした原子力の利用を開始してから、まだ60年程度です。
また日本の東海発電所において最初の原子力発電を開始されたのが1966年ですから、
歴史としては50年ちょっとです。

原子核反応により発生するエネルギーは、化石燃料の燃焼などの化学反応により
発生するエネルギーに比べ桁違いに大きいエネルギーを抽出することができます。

今回の原発事故の件もあり原子力=悪みたいなイメージになっていますが、
原子力を作り出す物質自体は、地球上で静かに存在している悪でも善でもないニュートラルなものであり、
人間が手を加え増幅させ、巨大なエネルギーを吐き出す怪物に仕立て上げたのです。

その怪物もきちんと鎖をつけて細心の注意を払っていれば、
人間にとってまだ有用な存在だったのでしょうが、
なにせ一歩間違えて野に放たれれば二度と制御できない怪物であり、
現代物理学(量子物理学)の光と影を象徴するシロモノなのかもしれません。

先日寺田寅彦の「俳句の精神」の記事を書きましたが、
一般には彼が物理学者としてどんな仕事をしていたかは知る人は少ないと思います。

研究上の業績としては、地球物理学関連及びX線の結晶透過という当時の先端をいくものも含まれますが、
特筆すべきとして「金平糖の角の研究」や「ひび割れの研究」などが挙げられます。

どんな研究か想像できますか?
そういう自分も詳しい説明はできないのですが、
統計力学的な「形の物理学」分野での先駆的な研究との事で、
これら身辺の物理現象の研究は「寺田物理学」と称されているそうです。

人間が制御できないようなエネルギーを作り出す現代物理学(量子物理学)と異なり、
自然の現象を自然に観察実験して社会に有用な法則をみつける。

あまりいい言い方ではありませんが「地球に優しい物理学」とでも言いましょうか。

また寺田の弟子に中谷宇吉郎という物理学者がいます。
自分が子供の頃はよく本に載っていたのですが、雪の結晶の研究で有名な人です。
気象条件と結晶が形成される過程の関係を解明し、
それに関連して凍上や着氷防止の研究など低温科学に大きな業績を残した、
これまた「地球に優しい物理学」を追究した人です。

このような物理学者がいた事を日本人はもっと誇っていいと思いますが、
大量生産大量消費のイケイケの社会では、今のところは知る人ぞ知る存在に止まっています。

寺田寅彦の随筆等の作品は彼が物理学者だけに、内容にいわゆる科学を含むものも多く、
視点も面白いものも多いので今後も随時取り上げていこうと思っています。