らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「正岡子規」夏目漱石

自分はつい数年前まで夏目漱石正岡子規が大学時代からの友人だということを知らなかった。

知ったきっかけは司馬遼太郎坂の上の雲」を読んだことから。
ただこの小説は秋山好古真之兄弟が主人公のため、
子規と漱石の交友関係については一歩譲るところがある。
ところが他にいろいろ読んだりすると2人がまるで子どもの頃からの親友だったと錯覚を受けるほど
仲が良い関係だということがわかってきた。

今回読んだ夏目漱石正岡子規」もそのひとつ。

この中では教科書の記述では決して伺い知れない
漱石にだけ見せていたフレンドリーな子規の素顔を伺い知ることができる。
男同士の友情というのは女性の方には今ひとつわかりにくい部分もあって、
子規漱石の関係もそうなのですが、漱石の家に子規が居候し仲間が集まってきて
ワイワイうるさいから漱石も加わらざるを得なくなって、
子規が勝手に頼んだ蒲焼きの代金を漱石が肩代わりさせられた挙げ句、
金も貸す羽目になるという関係で友情は成立するのかと言われればするんです笑。

しかし漱石語る子規評はひどいもんです。
幼稚で気位の高く何でも大将にならないと承知しない男で、
詩はよく作ったが漢詩や英語の能力は箸にも棒にも掛からない。
読めもしない哲学書をひっくり返し、弁論もあえて謹聴するに足る程の能弁でも無い、
試験勉強も適当。
ほとんどほめてませんね。

極めつけは冬寒いから火鉢を持って便所に入り火鉢に当たるため和式便器に逆向きに座って用を足し、
更にその火鉢で肉を煮て食べるというエピソードですが、
どちらかというと神経質な漱石はその火鉢に近づこうとすらしなかったかもしれません笑

もし子規が現代に蘇って喜ぶことがあるとしたら
ひとつは秋山兄弟よりはるかに日本中に知れ渡る有名な存在になっていること。
子規は「わしはそんなこと最初からわかっとったんじゃ」と言いそうですが。
もうひとつは温水洗浄便座の存在かもしれないですね。
1日何回も入って温かい便座に座って夢見心地で俳句でもひねっていたかもしれません。

しかしながら現代は人間が打たれ弱くなったのかイレギュラーな相手の行動を嫌う人が増えてきたからか
子規漱石タイプの友情は少なくなってきたような気がします。
悪い意味で損得勘定がかっちりしてるといいますか。

数年前愛媛松山に立ち寄った際ここにも書かれている漱石の家(復元されたもの?)にも参りましたが、落ち着いた静かな感じの家でした。
あの2階に漱石が住んで1階に子規が居候して俳句仲間とワイワイやってたんだなと今も思い出します。
しかしその家も先年大雨による洪水で瓦礫の山になってしまったとのニュースを聞きました。
子規と漱石の思い出の家がなくなってしまって本当に残念でなりません。