らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「雪女」小泉八雲







前回予告したように、
2月は「雪」というタイトルの小説を読んでいきたいと思います。

今回の作品は小泉八雲「雪女」。
雪女といいますと、普通はこんな感じかと思います。





髪の毛は長く、肌は雪のように白く、
雪がモチーフなだけに全てが白く覆われているイメージ。


しかし、自分的にぴったりくる雪女のイメージはこちらです。
ちょっと現代的ですが(笑)






やはり前髪はきちんとキレイに揃ってないとダメです(笑)

しかし、この雪女さん、白というよりは青みがかった透明な感じで、
雪女というよりは氷女という感じではあります。




さて、雪女のストーリーですが、
雪深い北国の話かと思いきや、今の東京23区に隣接する多摩地区あたりのお話。
今でこそ首都圏の一角を成す住宅街ですが、当時は武蔵野の雑木林におおわれ、
ひとたび雪が降ると、深く雪に埋もれてしまうような気候だったようです。


さて、この雪女、年寄りは問答無用で凍え死にさせますが、
若いイケメンの命は助けています(笑)

その時の、雪女の言葉、

しばらく彼女は彼を見続けていた、――それから彼女は微笑した、そしてささやいた、
「私は今ひとりの人のように、あなたを殺そうと思った。
しかし、あなたを気の毒だと思わずにはいられない、
――あなたは若いのだから。……あなたは美少年ね、巳之吉さん、
もう私はあなたを害しはしません。」


イケメン好きの雪女というのも、
よく考えると不思議な存在ではあります(^_^;)

そして、雪女は人間として若者の前に現れ、
夫婦(めおと)になって一緒に生きていくことになります。

イケメン男性に対して、実に積極的なアプローチをする、
ある意味、人間らしい雪女です(笑)

そして、その若者との間に子供が10人できます(@_@;)
ということは少なくとも10年以上添い遂げていたことになります。


ところが、そんなある日、事件が起きます。
ある雪の降る寒い冬の日。
若者は、昔あった、夢ともうつつともつかない雪女に出会った不思議な話を話します。
その瞬間、雪女の態度は豹変し、若者の元を去っていきます。
今までの愛情溢れる夫婦生活の積み重ねは一体どこにいってしまったの?
というくらいあっさりと。


雪女はなぜ去ってしまったのか。
自分の正体がバレたわけではありません。
「へえ、そうなの。」と、なにくわぬ顔で、居続けることもできたはずです。

唯一考えられる理由は、掟(おきて)に背いたということ。
近代的合理的思考に慣れた我々的には、
昔からの掟といえども、合理的な理由がなければ、
自己の意志に沿って行動すればよいのではと考えがちです。

しかし、昔は、というか、ついこの間まで、禁忌(タブー)というのは厳しく存在したのです。
タブーとはまさに触れてはいけない因習であり、
たとえば、太古の、女性は船に乗ってはいけない、女人禁制の山、
大相撲の土俵に女の人が上がってはいけないというのもそうかもしれません。
人間をはるかに越えた、得たいの知れない存在に対しタブーを設け、
人間が決して立ち入らないようにしたのです。

そのようなどうしようもできない因習により去らざるを得なかった雪女。
合理的思考全盛の現代ならば、
昔とは違ったストーリーの展開が考えられるかもしれませんね。

ただ、この雪女も自らタブーを破っています。
本来なら、掟を守れなかった若者は問答無用で殺さなければならなかったはずです。
しかし、自分との間の子のために若者の命を生かしておいた。
雪女は雪の精で、自然に近い存在ですから、
自然と同じで容赦なく人間に襲いかかることもあるはずですが、
長らく人間と暮らした雪女は半分人間のようになってしまって、情が移ってしまったのでしょうか。

因習に従わざるを得ない存在でありながら、
人間の情に絡まれ、家族の元を去る雪女の哀しさと儚さ。
そんなことを感じさせる物語です。



次回はおまけ記事として、雪女伝説の生まれた背景や別のストーリーについて、
また、自分の身近で聞いた「雪女」の感想など、
ちょっと面白いものがあるので紹介したいと思います。



「雪女」小泉八雲
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