らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「饑餓陣営」宮沢賢治

今日は宮沢賢治が書いた深刻な食料不足におちいった軍隊の話です。
かろうじて部隊は全滅を免れるも兵士はみな飢えかかってへとへとになっている。
しかし大将だけは食料は豊富。
そこで下士官曹長が兵士の命を守るため重大な決断をする。


宮沢賢治がこんな話を書いていたのかと、驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。


この話は、大正11年賢治が26才の農学校教師時代、
農学校の生徒のため書き下され上演されました。
賢治が東京にいた数年間、当時流行していた浅草オペラに関心を持って、
インスピレーションを得て書かれたと言われています。


舞台はとある戦地マルトン原の軍営。
飢えかかって腹ぺこな兵士たちは、バナナン大将のバナナやらチョコレートでできた勲章が
食べたくてしょうがない。
そこで勲章を手にとってみたいと偽り、勲章を順繰りに回して食べてしまう。

どんな感じの話かもうお気付きでしょう。
これは宮沢賢治が書いた、コミックオペレッタという全編歌入りの戯曲なのです。
「饑餓陣営」という題名とは似つかぬ楽しいほのぼのとしたお話です。

後半、とにもかくにも大将の勲章を食べてしまったことに兵士たちは、
良心の呵責に耐えかね自決しようとしますが、そこは大将の度量の広さ。
全てを許し、なぜかいきなり自ら発明した生産体操と称するへんてこな体操を、兵士たちに教え始めます。
この脈略なくいきなりへんてこな体操を教えるという展開。

なんか吉本新喜劇っぽい強引さですが(笑、
結構本物のオペラの脚本にもこんなの、あったりするんですよ。

ただこれは農学校でどういう技術を教えているかということを、
観客に知らしめる意図があったんでしょうね。
体操のネーミングは当時の果実の栽培技術に全てちなんでいるそうです。

そして「飢餓陣営」のフィナーレを飾る歌「いさをかがやくバナナン軍」で大円団。

なぜ今回この作品を選んだかといいますと、
実は今「宮沢賢治‐その愛‐」という映画のDVDを見てまして、
その中で賢治と農学校の生徒達が演じているシーンが出ていたからなのです。

劇中で賢治の父親役の仲代達矢はなんじゃこりゃという感じの呆気にとられた表情で見ており、
正直自分も今ひとつ??という印象だったのですが、
作品を読んで、またDVDを見たら結構ツボにハマりました。

皆さんも一度目はわけのわからない話に思われるかもしれませんが、
二度三度と読むとやみつきの面白さに感じるかもしれませんよ。
なにかどこかのラーメン屋の謳い文句みたいですけど。

この作品には、賢治が賛美歌に独自の歌詞をつけたりした音楽などもついており、
音付きで見てみたいものですが、ネットで検索すると結構劇団が上演したりしてるんですね。
YouTubeにも映像があるようです。
興味のある方はぜひご覧になってみてください。