芥川龍之介「蜜柑」の車窓を追って
芥川龍之介の代表作「蜜柑」。
舞台は神奈川県を走る横須賀線の車中なんです。
「或曇つた冬の日暮である。
私は横須賀発上り二等客車の隅に腰を下して、ぼんやり発車の笛を待つてゐた。」
主人公は横須賀駅始発の上り列車に乗っているので、
作中小娘と車内でのやり取りがあったのは、トンネルの存在を考慮すると、横須賀ー田浦ー東逗子の間のどこかだと思われます。
蜜柑を車窓から放ったのはどこなのかなと思っています。
それらしき場所を動画に撮ってみました。
「しかし汽車はその時分には、もう安々と隧道トンネルをすべりぬけて、枯草の山と山との間に挾まれた、或貧しい町はづれの踏切りに通りかかつてゐた。」
横須賀―田浦間車窓動画
トンネルやそこを抜けて広がる視界、線路沿いの町並み、踏切は存在するも、
横須賀駅を出て3分足らずの風景で物語が展開するには早すぎる印象。
しかし、個々の風景はまさしく「蜜柑」の世界そのものです。
https://twitter.com/motanmozo/status/1294926020571590656?s=19
田浦―東逗子間車窓動画
物語の展開的にはまさにこの区間が舞台の大本命なんですが、
長いトンネルは有るものの、少々高いところを列車は走るため、
線路沿いの町並み、踏切といったものが存在しない。
https://twitter.com/motanmozo/status/1294937688018059264?s=19
トンネルの長さ、風景から総合すると、田浦ー横須賀間が一番の候補という感じがしますが、芥川龍之介「蜜柑」の舞台となった車窓を見た全体的な感想としては、
長いトンネル、トンネルを出て開ける視界、線路沿いの町並み、踏切、それぞれのパーツは存在したものの、物語の通りのものは見当たりませんでした。
芥川は物語を最も効果的にするために巧みに車窓の風景のパーツを組み換えたのでしょうね。
以上、芥川龍之介「蜜柑」の舞台を追ってみました。
興味ある方は車窓からの動画から作中の風景を見つけてみてください☺️
https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/card43017.html